三島由紀夫氏の「若きサムライのために」(1996年/文春文庫)の中で、三島氏は国体について次のとおり語る。
『・・・つまり「日本民族を守れ」「日本国土を守れ」といふのは、ちよつとあぶないんぢやないか。といふのは、共産党だつて日本民族には違ひない。・・・体制を守れといふところに確信を持たなければ、これからの国土防衛の問題でもなんでもあぶないぢやないか。「ぢや、体制つて何ですか」「自由主義、民主主義」「それぢやだめだ」と僕は言つたんだ。日本人は絶対、民主主義のために死なん。・・・
そこで出てくるのは、やつぱり国体の問題と天皇の問題ですよ。どうしても最終的に守るものは何かといふと、天皇の問題。それでもまだあぶない。カンボジアみたいに王制でだね、共産主義といふ国もあるんだからね。いまの共産党は、「天皇制打倒」を引つ込めてから十年以上たつが、ひよつとすると天皇制下の共産主義を考えてゐるんぢやないかと思ふ。これでもまだまだだめだ。天皇を守つてゐてもまだあぶない。
さうすると何を守ればいいんだと。ぼくはね、結局文化だと思ふんだ。本質的な問題は。』
この発言は、昭和42(1967)年のものである。1970年の自決を経て40年超、氏の国家観は今もなお輝く。
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